基礎知識(書籍関係)

表1~表4

表表紙を表(ひょう)1、表表紙の裏を表2、裏表紙の裏を表3、裏表紙を表4と呼ぶ。

ページの基本体裁

ページの基本体裁は次の図の様になる。点線で囲んだ領域は版面(はんづら、もしくははんめん)と呼ばれ、この領域に本文や図版が配置される。本文はこの版面内に絶対に収められるわけではなく、ルビや句読点のぶら下げによって、本文の一部が版面からはみ出すことがある。

柱とは書籍名や章名などが収まる領域であり、柱は版面には含めない。見開きの両ページに柱を掲げる方式を両柱方式、見開きの奇数ページに柱を掲げる方式を片柱方式と呼ぶ。

ノンブルとはページ番号が収まる領域である。ノンブルも版面には含めない。

天とは本の上の部分である。〝あたま〟とも称せられる。地とは本の下の部分であり、〝けした〟とも呼ぶ。小口とは本の綴じられて居ない部分であり、ノドとは本の綴じられる部分である。

ページの基本体裁

行の基本体裁

図に示した様に、文字本来の領域を「字面(じづら)」と呼び、その字面の囲む枠を「仮想ボディ」と称する。数多くの日本語の書体(和字)はこの正方形の枠内に上手く入る様に設計されて居る。一般に漢字の字面は仮想ボディ一杯になる傾向があり、仮名の字面はそれに対して小さくなる傾向にある。

この仮想ボディを整然と隙間なく並べていくことで、「行」が形作られていく。

この仮想ボディは本来は正方形であり正体と呼ぶ。縦方向に縮小した文字を平体と呼び、横方向に縮小した文字を長体と呼ぶが、小説では正体のみを用ゆる。

字間と字送り

図で示された様に字間は隣接する仮想ボディと仮想ボディとの空きのことである。字送りは隣接したる文字の基準点(一般的には中心、もちろん中心でなくとも良い)間の距離である。字間を空けないことをベタと称し、日本語組版は字間はベタとするのが原則である。

行間と行送り

行間はある行と隣行との仮想ボディ間の空きである。行送りはある行の基準点(これも中心とすることが多い)と次行の基準点との距離を指す。一行に収まる文字数を「字詰(行長)」と呼ぶ。行送りは通常文字サイズの1.6から1.7倍を基準にすることが多い。

行の基本体裁

判  型

判型――本の大きさ、仕上がりサイズは通常JISで定められた紙の寸法に準ずる。JIS規格はA判系列とB判系列の二つに分かれ、それぞれA0からA10まで、B0からB10まである。短辺と長辺の比が1:ルート2の矩形である。また、新書判や菊六判などのJISで定められて居ない判型を用ゆる場合もある。一部の変形判は印刷所ごとで寸法が異なることもある。

小説系同人誌では通常、文庫判(A6)、新書判、A5判が主流である。

製本様式と綴じ方

本の製本様式には上製本(本製本)と並製本(仮製本)の二つあるが、小説系同人誌では並製本がほとんどである。 綴じ方には針金で背を止める中綴じ・平綴じ、糊を使う無線綴じ・あじろ綴じ、綴じ方によって、ノドの開き具合が異なる。また、表紙と正対したときに右側が綴じられていることを右綴じ、その逆を左綴じと言う。縦書きの場合右綴じとなり、横書きの場合左綴じとなる。

中綴じは二つ折にした紙の折り目部分を針金で綴じる。ノド一杯まで開くが、耐久性はない。 平綴じは紙の端目から数ミリを綴じ代とするのでノド一杯まで開かない。平綴じの場合、見開きで図版を載せるときなどは注意する必要がある。

無線綴じは背の部分を数ミリメートル切断してから糊で綴じる。あじろ綴じは背を切断せずに切り込みを入れて、糊で綴じる。耐久性としてはあじろ綴じの方が上である。

オンデマンド印刷

印刷には様々な方式があるが、同人界隈でよく耳にする言葉はオフセット印刷とオンデマンド印刷の二つであろう。同人誌製作では自家製本をコピー本、印刷所製本をオフセット本と呼ぶことが多い。この呼び方は厳密には誤りであって、ほとんどの同人誌がオンデマンド印刷のお世話になると思われる(オフセット印刷が必要なほど、本が売れてほしい!)。

オンデマンド印刷の本来の意味は少部数の短納期印刷という意味であるから、厳密にはオンデマンド印刷は印刷技法とは言えない。オフセット印刷でもオンデマンド印刷は可能であるが、単にオンデマンド印刷と言えばオンデマンド印刷機を用いた印刷と見なされることが多い。間違いを承知で言うとオンデマンド印刷機は高速コピー機兼ーレーザープリンタと考えてくれればよい。印刷の原理も「電子写真方式」というレーザープリンタと変らないもので、印刷品質も600[dpi](解像度についてはDTPの章を参照)と通常のレーザープリンタと同等であり(もっとも最近は従来のものより高解像度のオンデマンド印刷機も登場して居る)、トナーによる印刷なので独特の光沢が出てしまう。